阿川さんの作品は「雲の墓標」以来である。

内容は、
「まじめでのんき者の(桜田)六助、目鼻の効くちゃきちゃきの(鶴見)千鶴子、
若い男女が世間の荒波をかいくぐり、
恋を成就させてひとつの鞘におさまるまでの青春物語。」
(平松洋子さんの文庫版の巻末解説より)
昭和の香りのする懐かしい感じの小説。
それもそのはずで、本作品は、昭和36年5月から270回続いた新聞小説。
六助の少し鈍感なところを千鶴子は、「六さん、少し蛍光灯ねぇ」という。
今時の人には、解らないんだろうなと思う。
また、六助と本の行商に行った際、千鶴子は持ち出した本の数を偽り(その訳は省略)、
それが会社の人に知れてしまい、そのことを六助に庇われるという話がある。
このことで、千鶴子の父・善太郎は
「よき目的のために、この程度の筋が通らないことはやっても平気という、
一種の甘えがある。これがバレて人さまに迷惑をかけたなら、
それはやっぱり社会人として責任を感じなさい」
と千鶴子にいう。同感である。
阿川さんの作品は、少し苦手と思っていたが、本作品はとてもよかった。
(保存版にして再読)
平松さんの解説にあった、「ぽんこつ」(筑摩書房)、
「あひる飛びなさい」(集英社文庫) も読みたいと思う。
また、同じように頃の話である、
獅子文六さんの「悦ちゃん」(筑摩書房)、「コーヒーと恋愛」(同)、
「七時間半」(同)なども読みたいと思う。