けいた と おちぇの親方日記

16歳のわんこと暮らすのんびり日記です。

小説「羊と鋼の森」(宮下奈都著)

今年の本屋大賞授賞作品である、
宮下奈都さん作「羊と鋼の森」を読んだ。



主人公の外村は、高校生の時、
ある調律師を体育館へ案内するよう頼まれる。

このときの調律師、
板鳥宗一郎との出会いが運命であった。

外村は、高校を卒業後、専門学校に入り、
その後、調律師として、
板鳥の勤める江藤楽器店に入社する。

同僚調律師で、外村の指導役の柳さん、
少し気難しそうな秋野さん。そして、事務員の北川さん。

お客さまで、双子の高校生で、
そして、ピアニストの卵、佐倉和音と由仁。

北海道の片田舎の楽器屋さんで繰り広げられる、
まだ始まったばかりの調律師の物語。
そして、人として成長していく、静かな物語。

努力をすることの大切さ、
こつこつ積み上げることの大切さを教えてくれる。
派手さはないが、好きな作品であった。

「ピアノに出会うまで、美しいものに気づかずにいた。
 知らなかった、というのとは少し違う。
 僕はたくさん知っていた。ただ、知っていることに気づかずにいた。
 その証拠に、ピアノに出会って以来、
 僕は記憶のなかからいくつも美しいものを発見した。」

「きっと僕が気づいていないだけで、
 ありとあらゆるところに美しさは潜んでいる。」

「僕には才能がない。そう言ってしまうのは、いっそ楽だった。
 でも、調律師に必要なのは、才能じゃない。
 少なくとも、今の段階で必要なのは、才能じゃない。
 そう思うことで自分を励ましてきた。
 才能という言葉で紛らわせてはいけない。
 あきらめる口実に使うわけにはいかない。
 経験や、訓練や、努力や、知恵、機転、根気、そして情熱。
 才能が足りないなら、そういうもので置き換えよう。
 もしも、いつか、どうしても置き換えられないものがあると気づいたら、
 そのときにあきらめればいいではないか。
 怖いけれど、自分の才能のなさを認めるのは、きっととても怖いけれど。」

「才能っていうのはさ、ものすごく好きだって気持ちなんじゃないか。
 どんなことがあっても、そこから離れられない執念とか、闘志とか、
 そういうものと似てる何か。俺はそう思うことにしてるよ。」

「どちらがいいか、どちらがすぐれているか、という問題ではないのだ。
 (中略)
 比べることはできない。比べる意味もない。
 多くの人にとっては価値のないものでも、
 誰かひとりにとってはかけがいのないものになる」

「才能があるから生きていくんじゃない。
 そんなもの、あったって、なくたって、生きていくんだ。
 あるのかないのかわからない、
 そんなものにふりまわされるのはごめんだ。
 もっと確かなものを、この手で探り当てていくしかない。」

(素晴らしい調律師というか、真の領域というかにたどりつける人は)
「根気よく、一歩一歩、羊と鋼の森を歩き続けられる人なのかもしれない。」

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今年の本屋大賞は、なかなか良かったと思う。
第4位に入った、西川美和さんの「永い言い訳」(文藝春秋)。



作者の西川さんが監督となり、昨年、映画化もされている。
原作も映画も、是非読みたい(観たい)。