
小さな頃、母親に捨てられた主人公の世良順哉が、
母親である森村美雪に会い、
自分を捨てた本当の理由を知るというもの。
(かなり大雑把な粗筋であるが)
宮本さんの作品らしいといえば、らしい作品である。
作中に持って生まれたものについて、触れるところがある。
「持って生まれたものによって、人は人と異なる運命を辿る。
持って生まれたものとは、突き詰めれば、容貌、性格、体力、
才能、運の5つ。」
人が持って生まれたものは羨んだりしても仕方がない、
自分が生まれ持ったのものを受け入れながら、
生きていくしかないということを言いたいのだと思う。
人の幸福を妬んでも自分が幸福になれるわけではない。
しかし、人の幸福を妬んで犯罪を犯す人がたくさんいる。
自分も持って生まれたものを受け入れ、
自分たち家族がいかに幸せになることを考えていきたい。
また、やっと得られた仕事に不満を持つ青年に順哉がいう、
「与えられた場所から始めないで、どこから始めるんだ」と。
そうだと思うが、自分の境遇や環境に不満を持ち、
文句を言っても変わらないのであるが、言ってしまう。
本作品を読み、今を受け入れて頑張っていこうと思った。
小説を読むことで、生き方を見つめなおすことができる。
是非、若い人にも小説を読んでもらいたい。
最後に、あとがきで今は亡き辻井喬さんが書いている。
「宮本輝は出発の時から、生まれなかまらの差によって
人が受けなければならない悲しみや苦しみを描いてきた。
その描き方は、いかにしてその差をはね返し、
自らの人生を肯定的なものに変えていくかを動機として秘めながらも、
それを親子や男と女の愛と憎しみの関係のなかで確かめていく
という方法で貫かれている。」
「『生まれながらについている差』は、もはや宿命と呼ぶしかない」
「宮本は『錦繍』で、宿命との戦いを
『どんな不幸も、自分自身の内側でから出た結果という考え』、
それに耐えてゆく精神の強さを獲得した女主人公を描いた」
確かにそうだと思う。
だから、弱い自分は宮本さんの作品に憧れ、共感するだと思う。